溺愛ドクターに求愛されて

「あ、来た。……え、ちょっ。ヤバイくらい、いいじゃない」


ちょっと興奮ぎみにそう言った井上さんにグイグイ引っ張られて私は点滴のボトルに薬剤をつめながらそっちを見た。


そしてその人を見て、驚きすぎて点滴のボトルを床に落としそうになる。


心臓外科の医局長である金澤先生とナースセンターに入ってきたその人に一斉に視線が集まる。


その人を見て、私は慌てて隠れるように井上さんの後ろに立った。


「ちょっ……大谷。どうしたの?」


そう聞いてくる井上さんに私は引きつった顔で首を振る。


「後で話すんで、今は何も聞かないでください」


小声でそう言うと井上さんは納得がいかない顔をしながらもそのまま前を向いてくれる。


「忙しいところ申し訳ないが、今度京都からうちに異動になった心臓外科医の越川裕介くんだ。ここの5階東病棟に関わる事が多いと思うから、よろしく頼んだよ」


井上さんに隠れながらチラッと見たその人は、京都で会った時より髪が短くなっているけど確かに裕介さんで驚いたのと動揺したのとで心臓がバクバクいい始める。


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