溺愛ドクターに求愛されて
「何でこの病院にっていう質問なら沙織と出会う前からここに来ることは決まってた。何でここの病室にって質問なら沙織の事探してたら沙織が後ろに隠れてた看護師さんが教えてくれた。いい人だね、あの人」
それ絶対、井上さんだ。隠れたけど、見つかってたんだ。動揺して視線を揺らす私に裕介さんはため息をつく。
「あの時逃げられた時にはかなり落ち込んだんだけど、やっぱり金比羅様すごいかもな」
点滴のラインに手をかけたまま動けないでいる私に裕介さんは困ったように微笑んだ。
「今日、仕事終わったら会おうよ。俺から逃げた言い訳を聞くから。七時に、駐車場でね」
そう言った裕介さんが私の返事は聞かずに背を向けて病室を出て行く。
裕介さんが出て行ったドアをしばらく呆然と見つめていた私はハッとして点滴の速度をもう一度調整する。
「ごめんなさい、海老根さん。お騒がせしました」
患者さんにそう謝ってから、ナースセンターに戻った。