溺愛ドクターに求愛されて

そう言った私にちょっと悲しそうな顔をした越川先生が私の腕を掴む。


「俺、車なんだけど沙織は?」


「電車……ですけど。越川先生、手離してください」


誰に見られるか分からないし、こんなところで手なんか掴まれてるの見られたら何言われるか分からない。


「越川先生って……名前で呼んでくれないんだね」


悲しそうな顔をした越川先生が私の言葉を無視してそのまま歩き出す。


「電車なら、良かった。俺の家に行くから」


その言葉に驚く私を見て越川先生はニヤッと笑った。


「人に見られると困るんだよね。抵抗するなら無理やりにでも連れてくけど。どうする?俺は沙織となら全然噂になってもいいけど?」


そう言われて、ぐっと唇を噛んだ私は素直に車の助手席に乗る。


人がいないかまわりを見るけど、誰もいないみたいでちょっと安心する。


「あの日、逃げた理由。ちゃんと聞かせてもらうからね」


車を運転する越川先生にそう言われて私はぎゅっと身体を縮める。


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