幹部は幹部でも。
鳳狼
カタカタと指が釣りそうなぐらいの速さで、パソコンを操作しながら倉庫へ向かう。
「こんにちはー。」
倉庫の中に入り声をかけると、静かな倉庫に凛とした声が響いた。
いつも騒がしい仲間の声が聞こえず、誰もいない。
「あれ、今日は燐先輩だけなんですか?」
不思議に思い幹部室に直行すると、中にはソファに寝転んで雑誌を読んでるぐうたらこと、鳳狼の現総長・春崎 燐(ハルサキ リン)しかいなかった。
喧嘩してるときは格好いいくせに、普段はただのぐうたらな燐には皆呆れている。
「おー、唄ちゃん。今日はまた随分遅い出勤で。何かあったん?」
雑誌を片手に起き上がる燐に、鳳狼の幹部・秋影 唄(アキカゲ ウタ)は持っていたノートパソコンを机に置き、疲れた様子で答えた。
「これでもかってくらいに信号で捕まるわ、不良にカツアゲされそうになるわ、よく世間話をするお婆ちゃんに捕まるわで大変でしたよ。燐先輩に代わってほしいくらいに。」
「それは嫌やけど…。まっ、とりあえず休憩し。コーヒー飲む?」
「……甘めでお願いします」