同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
「じゃー迅のことはみちるちゃんに任せるから、看病してやって?」
「はい、あの、ありがとうございました……」
「いいえ。あーあとさ、迅が正気になったら言っといて。“みちるちゃんのことを怒る権利はお前にはない”って」
……なんですか、それ。
目をぱちくりさせる私に、玄太さんはへらりと軽く笑って片手を上げる。
「じゃあ、よろしく。また迅と一緒に店においで」
玄太さんは風のように去ってしまい、それ以上の詮索はできなかった。
比留川くんが、私のことを怒ってる……? だとしたら、理由はなんだろう。
悩みかけた途中で、ずしっと私に体重を預けてくる比留川くんをどうにかしなければならないことに気が付く。
部屋を移動するのは大変だし、とりあえず私のベッドに寝かせちゃってもいいかな……。
「よいしょ……っと」
彼の熱い身体を引きずるように抱え、なんとかベッドの上に下ろすことに成功した。
仰向けになった彼の表情は苦し気で、口からは荒い呼吸が繰り返されている。
「つらそう……。待ってね、今冷やすものを持ってくるから」
私はお風呂場とキッチンを往復して、洗面器に氷水を張るとそこにタオルを浸した。
そして比留川君のもとに戻り、タオルを固く絞って彼のおでこにそっと乗せる。
一瞬、冷たい感触に少し顔をしかめた彼だけど、慣れると心地いいのか次第に表情は和らいだ。