同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
「商品開発部企画課、比留川です。私がこうしてここに立てるのは、上司の推薦と皆様の支えあってのことです。管理職という立場に大きな責任とやる気を感じておりますので、これまで以上に会社に貢献できるよう、頑張ります。よろしくお願いします」
言い切るのと同時に、綺麗な動作で頭を下げた比留川くん。
自然と拍手が沸き起こり、管理職の皆が彼に好感を持ったことが伝わってくる。
せっかく緊張が解けたところだったのに、直前にこんなソツない挨拶されたらやりづらい……!
隣で静かに腰を下ろす比留川くんをちょっと恨みつつも、私は椅子からスッと立ち上がった。会議室中の視線が私に集まって、いたたまれない。
でも……吉沢さんや久我さんが見守ってくれてる。頑張れ、みちる。
小さく息を吸い、私は話し出す。
「商品開発部お客様相談室、難波みちるです。お客様の声を直に受け取るこの部署に来て四年目ですが……数え切れないほどたくさんのクレームを処理してきました。中には、言いがかりとしか思えないようなものもあったり、電話口で罵詈雑言を浴びせられることもあります」
もう、電話に出たくない……と、トラウマになりそうなほど怖いお客様もいた。
でも、経験を積むうちに気が付いてきた。
わざわざ時間を割いて電話を掛ける、メールの文面を作る。本当に気に入らない企業に対して、そんなことするかなって。