同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
溺愛level8*彼の本性は…?
ゲームをやりながらいつの間にか眠りこけていた私は、八重ちゃんに起こされて朝が来たことに気が付いた。
今になって会社に着ていく服がないことに慌てたけれど、そこまで体形に差のない八重ちゃんの服を拝借し、ついでにメイク道具も借り、何とか出勤の準備ができた。
いきなり押しかけて泊まらせてもらって、その上借り物ばかりして迷惑かけまくり私に、八重ちゃんのお母さんは朝食まで作ってくれた。
一緒に食事をしながら「内気な娘がこんな素敵な先輩と親しくしているなんて……!」と感激していたけれど、頑張り屋の八重ちゃんこそ自慢の後輩ですよ、と伝えると、目元を緩めてしみじみ母親の顔をしていた。
「いいお母さんだねぇ。全然厳しくなかったじゃない」
八重ちゃんの家を出て、一緒に電車通勤をする途中、並んでつり革をつかむ彼女に話しかける。
「まあ、母はそれほどでもないですね。でも父が江戸っ子気質っていうか、頭の固い人で……」
「そうなんだ。今回は慌ただしくてゆっくりお話できなかったけど、今度遊びに行くときはちゃんとご挨拶させてね」
「はい。その時はまた新しいゲーム仕入れときますね!」
ゲームのこととなると急に目が輝き出す八重ちゃんをクスクス笑いつつ、会社へ行く心構えを少しずつ固めていく。
でも、目の前を流れていく車窓が次第に見慣れたものになってくると、途端に弱気になってきた。
なんといっても、同じオフィス内の隣の部署っていうのが痛い。
どんなに避けようとしたって、一日のうち一度も視界に彼を入れないというのは無理だろうな……。
結局気持ちを立て直せないまま、会社の最寄り駅で電車を降りる。