同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
「……わかりました。何とか上に掛け合ってみます」
「ありがとうございます。後ほど、営業部の方から正式に連絡を」
「承知しました」
私が一瞬意識を飛ばしているうちに、交渉は成立したらしい。比留川くんと蒲生さんは晴れやかな笑顔で固く握手を交わしていた。
「それでは、自分はこれで失礼します」
最後にまた深々とお辞儀をして応接室を出ていった蒲生さん。
ドアがパタンと閉まってしまうと、室内は妙な静けさに包まれた。
やばい、急に第三者がいなくなって、なんか気まずい空気かも……。
「わ、私たちも戻ろっか!」
場を取り繕うようにそう口にしてソファから立ち上がり、若干ぎこちない歩き方でドアに向かおうとしたその時――。
「……やっと、つかまえた」
そんな言葉とともに腕をがっちり掴まれて、心臓が一瞬止まったような錯覚を覚える。
つ、つかまっちゃいました……。
たらりと背中に冷や汗が伝い、動作を止めたまま振り向くこともできない。
「きゃっ」
そんな私にしびれを切らしたように、つかんだ腕をグイッと引いた比留川くん。
よろめいた私の身体は、背中からソファに倒されてしまった。
急に反転した世界に目を白黒させる私の上に、比留川くんの影がかかる。