同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
右手でビジネスバッグを持ち、左手をスーツのポケットに突っ込んでいる姿がサマになりすぎて、まるでモデルさんのよう。
その立ち姿に見惚れてぼうっとする私に、彼が短く問いかける。
「仕事、終わった?」
「あ……うん。ちょうど、終わったところ」
なんで私の仕事の進行状況なんて聞くんだろう。その本意が読み取れず、ただ彼を見つめる。
「じゃあ行こう。店の場所、わかるよな?」
行こうって……飲み会のことだよね。もしかして、私たち、二人で一緒に?
急にドキッとして返事をすることを忘れていると、比留川くんは口の端を片側だけ上げ、意地悪そうな笑みをこぼす。
「……わかんないんだ。難波って、そういうとこちょっと抜けてるよな」
「え?」
「カッコよく挨拶キメたかと思えば、机にデコぶつけるし?」
バカにするような口調に、かぁぁっと顔に血がのぼっていく。
なんで今そのことを蒸し返すの~! しかも楽しそうに!
「あ、あれは忘れて!」
「どうするかな。飲み会でみんなに暴露するってのもいいし」
「ぜ、絶対ダメっ」
ははっと笑いながら部屋を出ていく比留川くんの背中を追い掛け、私たちは一緒に会社を出た。
それから、夜が始まったばかりのオフィス街をふたりで歩く。
同期とはいえ、そこまで親しくはなかった比留川くんと、こんな風に並んで歩いているなんてちょっと不思議。
クールなのかと思いきや、意外とよく喋るし、なんか意地悪だし……。