同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~


「……それで、みちるはそれを信じたわけか」

「え、いや、信じられないなとは思ったけど……金髪の写真は確かにちょっとチャラかったかな、と」

「そんなモンまで暴露したのか沙弓は……まぁ、あの頃の容姿を見たなら妙な疑いを持たれてもしょうがないか……」


ブツブツと独り言のように話す比留川くん。

この感じだと、沙弓さんにつかまされたのはまさかのガセネタ……!?

内心激しく動揺する私に対し、比留川くんは腕時計を確認して冷静に呟く。


「さすがにもうそろそろ戻らないとやばいな。……みちる」

「はいっ」

「今夜、玄太の店に集合。そこで全部話す」

「う、うん、わかった」


ああ、やっとドキドキから解放される……。

ホッと胸をなでおろしながら、私は比留川くんが上から退いてくれるのを待っていたのに。


「……今日は逃げんなよ?」


妖し気に目を細めてそう囁いたかと思ったら、彼は私の唇の端に短いキスを落とした。

な、な、な、なんで……? 私、失恋したはずじゃ……。

状況が呑み込めずにぱちぱちと目を瞬かせる私に、彼はにやりと口角を上げてひとこと。


「今はこれだけ。マジで唇にすると、その先我慢できなくなるからな」


そうして革張りのソファをぎゅ、と鳴らしながら立ち上がった彼は、呆然とする私を部屋に残して応接室を出て行ってしまった。


「や、やっぱり、チャラい人なのでは……?」


まさかの疑惑は残ってしまったけれど、なんだかこの恋にちょっと光が射したような気がする。

……とはいえ今は仕事中だ! 煩悩退散!

私はうるさい心臓をどうにかなだめ、そそくさ応接室をあとにした。


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