同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
「問題はそれじゃねぇ。……高校ん時のアレ、俺はまだトラウマなんだよ」
その秘密を知る玄太に、正直な想いを吐露する。
頭の中で勝手に再生されるのは、かつて付き合っていた元カノとの別れのシーンである。
「お前な、あれからもう十年くらい経つだろ。気にし過ぎだって」
玄太は鼻で笑うが、そう簡単に俺の胸にかかった霧は晴れない。
仏頂面でカウンターに頬杖をつき黙り込む俺の前に、玄太は注文してもいないレバーの串を置いた。
「これでも食ってみちるちゃん来る前に力つけとけ。好きなんだろ? 彼女のこと」
「……当たり前だ」
低い声でぼそっと答え、荒々しくレバーにかぶりつく。
……だから悩んでいるんだ。これまで、彼女の前で俺の本性の片鱗は見せたことがあるものの、全面に出したことはない。
だからこそ彼女の方も、時々変わる俺の表情に戸惑っていて、それが沙弓の嘘とうまくリンクしたために誤解しているのだろう。
「いいじゃねえの。好きな男にこれでもかってくらい愛されたら、普通は幸せ感じるもんだぞ」
「……でも彼女がそうだという確証はないだろ」
「この臆病者。もしお前が言えなかったら俺がぶちまけてやるからな」
「それはやめろ……。ちゃんと、自分で言う」