同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
「いいなぁ横浜……同じ都会でも、東京みたいにごみごみしてないよね」
「別に大して変わらなくないか?」
「変わるよー。観覧車も山下公園もランドマークタワーも半月ホテルもあるし」
「……それ完全にみなとみらい周辺に限った話だろ」
そんな他愛のない会話をしながら歩くこと十数分。
目的の和風創作居酒屋に到着し、私たちは一緒に店の暖簾をくぐった。
通された個室は掘りごたつのある座敷で、いくつか組み合わせた細長いテーブルを囲むようにして座る商品開発部メンバー。
キョロキョロ顔ぶれを確認すると、やっぱりそれぞれの課ごとに分かれて座っているようだ。
……残念。比留川くんとは、離ればなれか。
「あ、みちる先輩! こっちですー」
私の姿を見つけて手招きしてくれるのは、頬を赤くしてしたたかに酔った様子の八重ちゃん。
いつものネガティブオーラが一切なく、にこにこと上機嫌のようだ。
「ごめんねー遅れて。八重ちゃん、けっこう飲んだ?」
「そんなことないですよぉ。あ、先輩、来て早々お願いがあるんですけど」
「お願い?」
八重ちゃんはビン底眼鏡をくいと上げ、声を潜めて私に耳打ちする