同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
立ち止まった迅は、またしてもその場で腕を組み、何か悩んでいる。
いったいどうしたっていうの?
私の怪訝な眼差しに観念した彼は、頼りない声で言う。
「……やっぱさ、水着の上から羽織るやつも買わない?」
ま、まだ水着のこと考えてたの……!?
私は堪えきれずに、ぷっと吹き出してしまった。
「笑うなよ……こっちは切実なんだ。みちるは自分のスタイルの良さを分かってない」
「ええ? そんな大したもんじゃないってば」
褒めてくれるのは嬉しいけれど、グアムにはもっとグラマラスなブロンド美女とかが溢れかえっているでしょ?
真面目に取り合おうとしない私に、迅は盛大なため息をこぼす。
「そんなことない。あー、ホント、絶対に俺のそばを離れるなよ。コレもう命令だから」
念を押すように強い口調で言う彼に、くすくす笑いながら頷く。
こういうことになると必死になる彼は、仕事の時とはまるで別人で、それがまた愛しい。
結局彼が見せるどんな顔にも惹かれてしまう私は、おそらく彼と同じ体質なのだ。
たった一人を心から愛すと、その人のこと以外なにも見えなくなってしまう。
でも、愛し愛されることに真剣になれる私たちは、きっと幸せ者。
たとえ、溺愛中枢が壊れていてもいい。
私たちはずっと、愛し合うことをやめない。
END