同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~


「グアムの海、楽しみだね」


ウィルが車を発車させるのと同時に、後部座席で隣り合って座る迅に話しかけたけれど、彼はやっぱりどこか上の空。


「じーん!」

「え? ああ……波もいい感じに割れてるしな」

「……波が割れてる?」


迅と話していると時折飛び出すよくわからないサーフィン用語。

それに首を捻っていると、運転席からウィルが解説してくれる。


「ブレイクとも言うんだけど、沖の方でうまれたうねりが岸の近くまで来ると海底にぶつかるんだ。でも、水面のほうは岸に向かって進む。そこで波が盛り上がって、崩れることを日本語では割れるって表現するみたいだね。サーフィンではそこを見極めるのがキーなんだ」

「へえ……」


わかったようなわからないような……。


「……ウィルもやるのか、サーフィン」


ウィルの話に興味をひかれたのか、迅が初めて彼に話しかけた。


「イエス。ボクの趣味はナンパとサーフィンだから」

「はは、そういうヤツ俺の友達にもいるよ。結婚してからナンパは卒業したけど」


……玄太さんだ。絶対玄太さんだ。こんな場所まで来て彼を思い出すなんて、迅と玄太さんの友情にちょっと妬ける。

って、せっかくの旅行中にそんなつまんない感情は無視無視!


「ジンとミチルはケッコンしないの?」


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