同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~


いかにも南国という感じのヤシの木が何本も流れていく景色を窓から眺めていたら、ウィルから唐突な質問が飛んできた。


「へっ?」

「いや、ボクと同い年ならそろそろ考えてるかなーって」


私は間抜けな声を出して一瞬固まり、それから迅がどんな顔をしているのか窺う為にそうっと首を横に向ける。

な、なんて答えるんだろう……。そりゃいずれそうなれたら、とは思うけど、まだ付き合って三か月だし、お互い結婚について話したことはない。

だからといって、バッサリ“まだ考えてない”とか断言されても傷つくし……!

迅は動揺しているのかいないのか、いつものクールな様子で何か考えていたけれど、しばらくして口を開いた彼は、ちょっと悪戯っぽく笑っていて。


「それはウィルという邪魔者がいないときに言う」

「ははっ。それもそうか。ゴメン、余計なお節介だったね」


な、なにそれ~。思わせぶりだけど結婚するともしないとも言ってない、微妙な発言……。

ちょっとくらい前向きな言葉が聞けるかもと期待したのにな……。

ひとり落ち込む私をよそに、迅とウィルはサーファー同士意気投合していて、車内には私の知らないサーフィン用語が飛び交っていた。


私は仲間はずれにされたようでちょっと拗ねつつ、海が近くなってくると別のことでドキドキしはじめていた。

その理由は、今着ている白のワンピースに隠した水着――。

迅には『上から何か羽織ること!』と旅行前から口酸っぱく言われていたけれど、羽織りものになるような服は全部社長に預けた荷物の中。

それはもちろん確信犯で、せっかくのグアムだから、勇気を出して迅に水着姿を見せようという計画なのだ。

旅行が決まってから約ひと月、多少ダイエットもしたつもりだけど、可愛いって思ってもらえるかな……。

< 193 / 236 >

この作品をシェア

pagetop