同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
こんな静かな時間は久しぶりだから、ありがたいな――。
網戸になっている窓から入ってくる風で揺れるレースのカーテンを眺めながら、最初はそう思っていたけれど……。
実は今回の旅行のことが決まってからずっと心に引っかかっていることがあって、愛咲がいないと余計にそのことばかり考えてしまう。
「ねえ」
「ん?」
「本当は、あたしたちの家族じゃなくて……吉沢家が呼ばれる予定だったんじゃないの?」
平静を装いつつ聞いてみたけど、胸の古傷が疼くのを感じた。
彼の話に触れるのは、いつぶりだろう。愛咲が生まれてからは初めてじゃないだろうか。
「……なんでそう思う」
むくっと起き上がったハルが、静かに呟く。
「だって……社長や久我さんと同期だし、昔から仲がいいでしょ?」
「……まあな。でも、うちと違って奥さんが会社と無関係だから、気を遣うと思ったんじゃねーの?」
「そうだよね。奥さん、いやだよね。過去に夫と不倫してた女と旅行するなんて」
「……愛海?」
あたしの様子がおかしいことに気付き、ハルが両肩を掴んで顔をのぞき込んでくる。
でも、そのまっすぐな瞳を見つめ返せない。
あたしはハルから目を逸らしてベッドの端をにらみ、震える声で続ける。