同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
へえ……。なんとなく愛咲は面食いな気がしていたけど、初恋の相手がまさか二次元とは。
「父としてはフクザツ?」
「まあな。……どんな奴かちょっと見てくる」
「あ、あたしも行く! 愛咲がいつまでも社長たちのお邪魔になっちゃあれだし、連れて帰らなきゃ」
二人で部屋を後にして、廊下を歩きながら思う。
その二次元のイケメン、もしかしてハルに似てたりして。
だって、ハルがあまりに溺愛するものだから、愛咲のほうもパパが大好きなのだ。
「なんだよ、にやにやして」
横顔を盗み見ていたのがばれて、ハルが怪訝そうな顔になる。
「別に。ただいい男だなーって見てたの」
「そんなの今さらだろ」
鼻で笑って自信過剰な台詞を吐く姿さえサマになるのがなんだか悔しいけれど、あなたは本当にいい男だし、いい夫だし、いい父親。
あたしには、もったいないくらいの人。
「ねえハル。あたし……結婚してからも支えてもらってばかりで、何にも返せてないけど」
急に立ち止まったあたしを、ハルが振り返る。
「ずっとずっと、ハルに恋することだけはできる」
それがお返しになるのかどうかも分からないけど、あたしには、それしかできないから。
あたしのまっすぐな視線にちょっと照れたように笑ったハル。
でも、すぐに意地悪く口角を引き上げて。
「……愛咲迎えに行くのやめるか? 部屋戻って今すぐ抱きたくなった」
「え……だ、ダメだよ!」
「なんでだよ。愛咲も妹か弟欲しいって言ってるぞ」
「そ、そういうことを言ってるわけじゃ」
慌てるあたしをはははと笑って、結局は社長の部屋の方向へ歩き出すハル。
完全にからかわれたのだと悟ったあたしは、ぷりぷりしながらその背中を追いかけるのだった。