同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
3.脱?乙女ゲーマー side八重
私の趣味は乙女ゲームをプレイすることである。
そして、二次元の王子様に甘い言葉をかけてもらったり、ときには気持ちがすれ違って切なくなったり……
そんな疑似恋愛が体験できる乙女ゲームは、グアムに来ても手放せない。
今も部屋のベッドにうつぶせになり、携帯用ゲーム機をしっかり握りしめているところ。
「なあ、そろそろ出かけないか? 散歩がてら買い物をしよう」
……このセリフは、三次元の王子こと私の彼氏、京介さんの声である。
彼のことはこの世で一番大好きだし買い物も楽しそうだけど……。
「ちょ、ちょっと待ってください……! これから限定スチル付きのイベントなんです!」
ゲームの進行状況がいいところに差し掛かっているので、中断したくない。
そしてさっきまで幼児である愛咲ちゃんが部屋にいたから、あんまり刺激的なシーンがあったら困る、と思って、そのイベントを迎えるのずっと我慢していたのだ。
「ふうん。八重は本当にゲームが好きだな」
今まで傍らに座っていた京介さんが、クスッと笑って私の隣に寝転がる。
ふわん、と彼の香水が香って、ドキッと胸が跳ねた。
「ご、ごめんなさい……こんな彼女で」
初めての海外旅行は目に見るものすべてが新鮮だけれど、だからって普段インドア派の私が急にビーチに繰り出そうとも思えなくて……。
京介さんはそんな私を全然責めることがないから、なんだか余計に申し訳ない。
気まずさをごまかすようにゲームの画面にじっと集中すると、二次元ヒーローのどアップが映し出されている。