同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
「……うん。それを、今日会ったばかりのウィルがわかってくれるのに、どうして迅はわかってくれないんだろうね」
ミチルは微笑を作ったけれど、その笑顔には全然元気がなくて、僕は腹立たしくなる。
せっかくの旅行で好きな女の子ににこんな顔させるカレシって最低じゃないのか?
しかも、落ち込んでいるミチルを放っておいて自分はサーフィンばかりして……ミチルが可哀想に思えてならない。
「ねえミチル」
「うん?」
「ここでこうしていてもヒマでしょ? 近くのバーに行こうよ。僕は運転手だから飲めないけど、海を見ながらお酒でも飲めば気晴らしになるかもしれないし」
「でも……」
言いよどんだミチルの目線が、青い海に向けられる。
その波間でジンは相変わらずサーフィンに夢中になっていて、こちらの様子など気にも留めていないみたいだ。
「……行こう。ジンのヤツ、少しは焦ればいいんだ」
思わず本音をこぼして、ミチルの手を強引につかむ。
振りほどかれるかもと思ったけど、ミチルもジンに対して思うところがあるのか、しばらくすると僕の手を握り返して頷いてくれた。
――イエス! これで少しの間、ミチルは僕だけを見てくれる。
顔には出さないけれど、僕は心の中で小さなガッツボーズを決める。
ミチルはどんな口説き文句がお好みだろう。
酒に酔ったら、今よりセクシーになってしまうのだろうか。
考えれば考えるほど期待は膨らみ、ミチルとつないだ手がいつしか汗ばむほどに僕は高揚していた。