同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
みちるを連れてやってきたのは、海からほど近い場所にあるバー。
僕たちはそのテラス席に案内され、店員にオーダーを尋ねられた。
「ミチルのぶんも勝手に注文していい?」
「うん。メニュー読めないし助かる」
「OK。uh……」
僕が好みの女の子にお酒をご馳走してあげるとき、決まって選ぶカクテルがある。
今回もそれを注文して店員がテーブルを離れるのを見送ると、僕はミチルをじっと見つめた。
開放感のあるテラス席は心地よい海風が吹いていて、そのせいで少し乱れた髪を耳に掛けるミチル。
その耳にキスしてくすぐったがる彼女が見たいなぁ、なんて欲望が湧いてきて、同時に胸の内で語り掛ける。
ねえジン、キミの大事な人を目の前によからぬことを考えている男がここにいる。
そんな奴が彼女と二人きりだっていうのに、キミは何をしているの?
ケッコンのことを聞いたときだって、ミチルは何かポジティブな発言を期待していただろうに、僕がいるからってクールぶってさ。
キミといることが、ミチルにとって本当に幸せなの?
「ウィル」
ミチルに呼ばれて我に返ると、彼女は頬を赤くしてテーブルの端をにらんでいる。
「ん? なに?」
「……ちょっと、見過ぎ」
どうやら僕の熱い視線に耐えられなくなったらしい。けれど僕は目をそらさずに、ふっと笑みをこぼす。
「だって、可愛い女の子はずっと見ていたいものでしょ」
それどころか、ちゃっかり口説き文句を添えることも忘れない。