同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
5.奇跡を信じて side猛
【別荘内のプールサイドで、のんびり日光浴をしましょう!】
そのプランを提案したのは小梅で、彼女はこの旅行で海だろうがプールだろうが、水につかる気がいっさいないらしい。
理由は、“身体を冷やすと妊娠しにくくなるから”――だそうだ。
別に本人がいいのなら何も思わないが、最近の小梅はその妊活とやらにとらわれ過ぎて、どうにも無理をしているように見える。
そもそもこの旅行に連れてきたのだって、“妊活に集中したいから”と会社を退職し、毎日スマホアプリの妊活カレンダーばかり眺めている彼女の気分転換のためだったのだが……。
「とりあえず、今日もきてないです、生理。日本帰ったら検査薬試してみようかな……」
青空のもと、ビーチチェアに並んで寝転ぶなり、彼女の口から出るのは結局その話題。
「……そうか。まあ旅行中はあんまりそのことばかり考えるより、自分が楽しむ方を考えたらどうだ?」
俺は気持ちを軽くしてやろうと思ってそう言ったが、小梅の表情は逆に険しくなってしまった。
「なんでそんなに他人事なんですか?」
棘のある声で尋ねられ、俺は上半身を起こしてかけていたサングラスを外す。
……またか。
最近の小梅はいつもこんな感じで、よくわからないタイミングで不機嫌スイッチがオンになる。
それも、妊活のせいなのだろうか。