同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
こいつ……何を言っているんだ。まさか、みちるを狙って?
……くそ。軽い雰囲気だとは薄々わかっていたが、社長が信頼している男だからと、危険視してなかった。
こういう奴だと最初からわかっていたら、ふたりきりになんてさせなかったのに……。
ふつふつ沸いてくる嫉妬心を悟られぬよう無表情を装う俺に、ウィルが楽し気に告げる。
「お酒を飲ませて、“メイクラブしよう”って誘ったんだ。ビックリはしてたけど、嫌そうではなかったよ。だから、もうひと押しかなーなんて――」
どくん、と血液が逆流するような錯覚を覚えた。
俺は気が付いたら彼の胸ぐらをつかみ、ペラペラと勝手なことばかり喋るその口元をめがけて拳を振り上げていた。
しかし、その拳は瞬時に顔を庇ったウィルの手のひらにパシンと当たっただけで、俺は彼を殴ることがかなわなかった。
「……なかなかうまいでしょ、防御。こういう性格だとこうやって殴られるケース多いから、だんだん慣れてきてさ」
得意げなウィルに心底腹が立ち、思わず舌打ちをしてしまう。
つまり、こいつは相当な女たらしってわけだ。どうして見抜けなかったんだろう。そして、みちるは今どこに……。
「でもこれで安心した。ジンが本気で怒らなかったら、ボクがキミを殴ろうと思ったよ」
「……は?」