同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
……ダサく、なんてないよ。
沙弓さんとのことは、私が心配するようなものではないって、なんとかして伝えてくれようとしてるってことだもの。
幻滅どころか……ぐんぐん成長してます。
最初は小さかったはずの、あなたへの、恋心が。
「ひとつだけ……聞いていい?」
沙弓さんとの対面でかたくなだった心が徐々にほどけてきて、素直な気持ちが戻ってきた私は聞いてみる。
「私が、住むことになる、あの部屋……本当は、誰のためのものだったの?」
沙弓さん以外にも、心配しなきゃならない女の人の影があるなら、いっそ今はっきりさせておきたい。
比留川くん自身の寝室とほぼ同じ広さで、東京タワーとその周辺の景色が見渡せる、眺望抜群のあの部屋は、いったい何のために――。
緊張して膝の上でぎゅっとこぶしを握る私とは対照的に、比留川くんはどこか呆けたように目を丸くして、ぱちぱちと瞬かせる。
「誰って……あれ? 言ってなかったっけ。玄太がまだ独身だったころ、アイツとルームシェアしてたって……」
私は一瞬固まってから、驚きの声を上げる。
「き、聞いてない! ……なんだ、男友達だったんだ」
あからさまにほっとして、気が抜けたようにベンチの背もたれに寄りかかる。
もう、緊張して損したよ……!