同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~


上司……私の場合、吉沢部長、か。

でも、彼は比留川くんの上司でもあるわけだから、変更した私の住所が比留川くんの住んでいる場所と同じだと気づかれる可能性がある。

どうにかして、それは避けたいなぁ……。

腕を組んでううむ、と唸る私を、八重ちゃんがせかす。


「先輩、悩んでないで早く出ないと! 社長をお待たせすることになっちゃいます」

「ごめん、そうだった」


八重ちゃんから“今日、社長とランチできることになりました! 緊張しちゃうので先輩も同席してください”という衝撃のラインが送られてきたのは今朝のこと。

私も一緒でいいのだろうかと思いつつ、元王子と八重ちゃんの恋路も気になるしちょっとワクワクしている。


彼女と連れ立ってオフィスを出ていく直前、ちらっと企画課のほうに視線を投げてみた。

比留川くんは自分の席でパソコンを見ながらバランス栄養食のクッキーを齧っていて、仕事熱心な姿に感心しつつ、彼の体が心配になる。

昨日もベッドを買ったりいろいろしていたらいつの間にか夜で、二日連続で夕飯が外食になってしまったところだし。

今夜は野菜たっぷりの、体によさそうな料理を作ってあげよう。

ひっそりとそんな決意をして、私はオフィスの扉を出た。


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