同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
「難波?」
「は、はいっ」
彼の身体がある方とは反対側だけじっと見て、ひっくり返った声で返事をする。
「照れてるんだろ。耳、真っ赤」
「……っ。そ、そういうの指摘しない!」
クスクス笑う比留川くんにムッとして、私はパッと体を起こした。
もうダメだ。恥ずかしくて死んじゃう。
彼の顔を見ないようにしてソファから立ち上がり、テーブルの上で冷めてしまったお茶を一気飲みして、ふうと息をつく。
「お風呂、準備してくるね!」
わざとらしいくらい張り切って宣言した私に、飛んでくるのはまたもからかいの言葉。
「そんなに一緒に入りたいのか。……しょうがないな」
「ち、ちがいます! さすがにまだ、そういうのは……」
「ふうん。じゃあ、いずれは入りたいんだな」
「なっ……!」
そこで妖しく目を細めるなー! でも、否定もできない!
言い返す言葉に悩んで、でも結局、気の利いたことは浮かばずに、口から出たのは素直な思い。
「……そうだよ。いつかはそういう関係になりたいもん」
声を潜めてぼそりと呟いた私は、彼の反応を見るのが怖くて逃げるようにリビングを後にした。
うう……なんだか変なことを口走ってしまった。
引かれたかな……引かれたよね。
比留川くんは“癒されたい”的な穏やかかつプラトニックな気持ちなのに、一緒にお風呂入りたいとか先走り過ぎだよ私……。
自分の発言を後悔しながら、私はとぼとぼバスルームへ向かった。