同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
「そうなんです。東京湾から夜景を眺められるディナークルーズ、予約してもらって……私もちゃんとドレスアップして行ったので、自分がお姫様になったみたいで夢みたいなひとときでした」
「へえ……さすが社長。ていうか、そこまでしてくれるってことは、脈大アリじゃない」
「脈っていうか……その、いちおう、その夜に、私たち……」
急に小声になり、顔を赤くしてうつむく八重ちゃん。
その夜に、なによ。……ま、まさか!
私はここが朝のオフィスだということを一瞬忘れ、八重ちゃんに詰め寄る。
「し、したの!? 社長と!」
真っ赤な頬を両手で挟んで、彼女は静かにうなずいた。
なにその急展開! 一緒に住んでる私と比留川くんはキスすらまだなのに!
後輩に先を越されたことに若干ショックを受けつつ、彼女たちの初夜の詳細もかなり気になる。
幸い今日は金曜。話を聞くにはうってつけだ。
「……八重ちゃん、今夜飲むよ。そして根掘り葉掘り聞かせていただきますからね」
「お、お手柔らかにお願いします……」
強引な誘いだったけど、八重ちゃんはコクコク頷いてくれた。
比留川くんにはあとで【今夜は遅くなる】ってメールでもしておこう。
同居を始めてからなんとなく夜の外出を控えていたけど、たまにならいいよね……?
って、まだそういう面で束縛しあう関係でもないって。
八重ちゃんに比べてスローペースな自分の恋を憂いつつ、私は朝礼をするべく皆の前に出ていった。