同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
「そんなことを続けていたら、いつか重大クレームが発生して、大勢のお客様の信用を損なうことになるんですよ! そうやって目先のことばかり考えているからあなたの評価はいつまでたっても上がらないんです!」
「なんだと? 見たところアンタたちまだヒヨッコだろ? 俺は入社して二十年以上たつ大先輩だぞ? その大先輩になんて口の利き方を……!」
私の物言いにカチンときたらしい男性社員がじりじりと迫ってくる。
確かに、年数でいえば先輩なんだろうけど……尊敬できる部分が一つもない人に口の利き方とか言われる筋合いない!
さらに言い返そうと口を開くと、比留川くんが私をかばうようにして前に出た。
そして感情を露わにする私とは対照的に、抑揚のない声で告げる。
「……とにかく。豆の違いが分かっているなら、今後ニュークロップ以外は弾いて使ってください。現場のしたことは間違っていますが、日ごろからコーヒー開発課との間に摩擦があったということも問題がありそうです。そのことも含めて、今回のことは上に報告します」
では、と短く頭を下げて立ち去ろうとする比留川くん。
しかし男性社員はまだ気が収まらないらしく、彼を引き留めた。
「おい、アンタもずいぶん偉そうだな。どこの課の誰なんだ?」
「……商品開発部企画課、課長の比留川です。ちなみにこっちは相談室の係長、難波です。以後お見知りおきを」
ポーカーフェイスを保ったままそれだけ言って、今度こそその場をスタスタと離れていく比留川くん。
その背中を慌てて追いかける途中、こんな嘆きが聴こえてきた。
「んな……っ。あんな若造が課長だと? しかも小娘も係長?俺はまだ班長だというのに……!」
私は振り返ってべーっと舌でも出してやりたい気持ちだったけど、それはさすがに大人げないと、黙って比留川くんの後をついていく。