同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
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「それじゃあ、八重ちゃんの処女喪失を祝して、カンパーイ!」
「せ、先輩っ! ……個室だからって声おっきいです!」
仕事の後、約束通り八重ちゃんとやってきたのは、会社からほど近い鍋料理専門店。
オーソドックスな鍋も多数取り揃えているけれど、ここのおすすめはチーズフォンデュ。
和モダンな内装の個室でふたり、チーズがぐつぐつ煮える鍋を囲んで、シャンパングラスを合わせた。
「……はぁ。美味しい。それでそれで? どっちから誘ったのー?」
ぐいっと一杯飲み干しただけですっかりいい気分になった私は、さっそく八重ちゃんに絡んでいく。
「誘ったっていうとなんかアレですけど……船の話したじゃないですか。そこで食事してる時に、実は社長、ディナーだけじゃなくて宿泊の予約もしてあるって……」
お酒はひとくちしか飲んでないのに真っ赤な八重ちゃんは、もごもごと口ごもりながら話して串に刺さったブロッコリーをチーズの中につける。
……あ、おいしそう。私もさっそくやろう。
海老をチーズにくぐらせて口に入れると、アツアツのチーズと海老の風味が相まって、口の中が幸せでいっぱいになる。
「それで、トントン拍子に抱かれちゃったの?」
はふはふ至福の息つぎをしながら尋ねると、八重ちゃんは首を横に振る。
「いえ……さすがに私も初めてだし、色々ためらう部分があって……」
八重ちゃんは傍らのバッグから眼鏡ケースを取り出し、そこから例のビン底眼鏡を出すとなぜかそれを装着した。