同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
ボトルから彼女のグラスにシャンパンを追加し、飲み干してしまった自分のグラスにも注いで、二度目の乾杯をした。
ああ、なんだか娘を嫁に出す母親の気分だわ……。
うれしいような寂しいような……そして少しの羨ましさもある、複雑な先輩ゴコロ。
「そうだ。今朝も話が途中になっちゃいましたけど……先輩はどうなんですか? 恋愛方面」
ひと通り話し終えてリラックスしてきた八重ちゃんが、食事を進めながら今度は私に話題を振ってくる。
うーん……お酒も入ってうっかりペラペラ話したくなっちゃうけど、相手が相手だし、軽々しくは明かせない。
「まあ、片思い中……ってとこかな」
曖昧な言い方で逃げようとするけれど、社長に愛されて自信のついたらしい八重ちゃんはちょっと強気。
チーズフォンデュの串をびしっと私に突き付けて、熱弁をふるう。
「えーっ! 勿体ない! 告白しましょうよ! みちる先輩に告白されて断る人なんていませんって!」
「いやいやいや、そんなことないって……」
「あーりーまーす! だって顔良しスタイル良し性格良し、仕事能力も高いんですから最強じゃないですか。しかも一見華やかな都会女子なのに、過去には岡山弁バリバリだったっていう衝撃のギャップ付きですもん!」
「あはは……」
あまり触れてほしくないゾーンにがっつり踏み込まれ、思わず乾いた笑みが漏れる。
恋愛面において、その衝撃のギャップはできれば隠し通したいんだよね……。
社長と八重ちゃんみたいに、“自信のなさ”がプラスに働くことってかなりのレアケースだろうし。
私は、東京にきて頑張って作り上げた“難波みちる”でこの先も通すつもりなのだ。
そうじゃなきゃ、比留川くんみたいな素敵な人には釣り合わないと思うから――。