同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
ああ……いいにおい。あったかい。っていうか、好き。……大好き。
暴走し始める私の気持ちとは裏腹に、彼の背中を伝って聞こえてきたのは無感情な低い声。
「あのさ……それくらいならいいけど、この間みたいに服脱いで襲ってくるのだけはやめてくれ」
「なんで……?」
立ち止まった彼の顔をのぞき込みたくて、前に回り込んで彼の腕にしがみつく。
疲れたような、イラついたような顔をした彼は、私の手をそっとほどいて短く呟いた。
「なんでって……困るから」
「なんで困るの? 私は、困らないよ? 比留川くんとなら……」
あれ? 私、酔いに任せてかなり大胆なことを言ってしまってる……?
でも、嘘じゃないもの。
本当に、あなたなら……ううん、あなたがいいって、思ってるから――。
「好きなの……」
とうとう我慢ができなくて、切実な声で告げる。
好きで一緒に住んでるのに、何も起こらない微妙な距離感がもどかしい。
私も早く、八重ちゃんたちみたいに幸せになりたい……。
私はじっと比留川くんの目を見つめようとするのに、彼の方はその視線を避けるようにして目を伏せてしまう。
……なんで? なんでよ。
迫られて困るなら、どうして私と一緒に住んでるの?