同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~


みちる……って、呼ばなかった? それともあまりのショックで幻聴が聴こえたの?

濡れたまつげを瞬かせ、ぼんやり彼を見つめる。

すると私の後頭部はぐいっと引っ張られ、そのまま比留川くんの胸に抱き寄せられた。

な、なんで? 私、いま振られたばっかりだよね……?

自分の身に起こっている状況が呑み込めず、頭の中が疑問符でいっぱいになる。


「……付き合うのは無理って言った。でも、好きじゃないとは言ってない」

「え……?」


……な、なにそれ。この橋渡るべからず的なとんちですか?

言葉通り受け取っていいなら期待しちゃうけど、付き合えないのはどうしてなんだろう……。

彼の胸にくっついていた顔を上げ、上目遣いで首を傾げてみる。

すると、しばらく何かと葛藤するような表情を浮かべた比留川くんが、観念したように息をついて言葉をこぼす。


「……みちるって、酔ってる時の記憶なくすタイプだったよな?」

「う、ん……? それは、時と場合によるような……」

「じゃあ、今から起こることは無理やりにでも忘れて」


ドン、と少し乱暴に身体を押され、背中が壁にぶつかる。

呆気に取られているうちに私は彼の影に覆われ、獲物を仕留める獣のような鋭い瞳をした比留川くんが至近距離に迫っていた。

その表情はあまりにセクシーで、心臓が大きく飛び跳ねる。

な、なんか比留川くんの雰囲気が突然変わった……!?


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