同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
「きびだんごはやっぱり外せないよねー……」
地元の大手菓子メーカーの商品を手に取り、小さく呟く。
何を隠そう、私の実家は先祖代々続く和菓子屋で、ここには置いてないだろうけど、オリジナルのきびだんごも作っている。
いつか、比留川くんにも食べさせてあげたいな。今日のところはとりあえず、この有名メーカーのきびだんごをお土産に――って。
「地元の話はNGだった……」
今さらそんなことに気づき、すごすごと商品を棚に戻す。
後ろ髪をひかれつつ別のコーナーに向かおうとしたところ、誰かに後ろから肩をトントンと叩かれた。
「はい?」
パッと振り向いて、そこに立つスーツ姿の人物を見た私は驚愕した。
身長百八十七センチの筋肉質な体格、太い首に精悍な顔つき。
短髪だった昔と違って長めの黒髪をオールバックにしているその男性は、私に“脱・田舎臭さ”を決意させた張本人、元彼の甲本嵐(こうもとあらし)だった。
「嵐……」
「やっぱり、みちるだ。どれくらいぶり? つーか……ずいぶん綺麗になったな」
私だとわかって、安心したように目元を緩ませる嵐だけど、こちらはそうはいかない。
こんな場所で再会するなんて予想外で、どくどくと鼓動が乱れ、額には変な汗がにじんでくる。
笑顔の一つも返せない私に、嵐は少し傷ついたような、寂しげな顔をした。
「……恨まれてる、か。だよな。あんときの俺……みちるの気持ち、全然考えてなかったもんな」