君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】
驚いた。
ドキドキと胸が鳴っている。
まさか、あの日の走りをそんな風に言ってくれる人がいるなんて。
私にとったら恥ずかしくて、悔しい一日だったのに。
真剣な口調で私のことを話す槙野くんから本当にそう思ってくれていたんだって、いやってほどに気持ちが伝わってきた。
「それから、僕はずっと君を見ていた。
どうやったら君に好きだと言ってもらえるんだろうってずっと考えてた。
その答えが僕の存在を君の中から殺すことだった」
「…………」
彼の決意は揺るがないみたいだった。
私を視界に捉えるその瞳には一点の曇りもない。
「嘘、じゃないんだね」
聞いた時はそんなバカなって思ったし、絶対嘘だろう。私を騙しているのかって思ったけれど。
槙野くんの様子が真実だって物語っている。
彼を詳しく知っているわけじゃないけど、こんな事を演技で言う人じゃないって事ぐらいはなんとなくわかる。
それに、これがもしも演技なら彼は今すぐ俳優にでもなれると思う。
それぐらい危機迫っていた。
真剣そのもの。
私の問いに、槙野くんはゆっくりと首を縦に動かす。