君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】
「うん。嘘じゃないよ」
落ち着いた口調。
蝉が煩く鳴る教室で響いた彼の声。
その言葉を受け止めるように私は一度頷いた。
それから一言だけ口にする。
「わかった」
「えっ」
私が言った事に驚いた槙野くんは目を真ん丸にしている。
「私は槙野くんの事何も知らないから、教えて。
それに槙野くんも私の事何も知らない。
だから、知って。
その上で私の中から槙野くんを殺したいと思うのならそうしてもいい」
「……きっと、変わらないよ」
「わかんないじゃん。もしかしたら私が思ってたよりも嫌な女かもしれないし」
「それはない。断言する」
「だから、どうしてそんな事が言えるの」
「言ったでしょ?僕はずっと藤さんを見てきたんだ」
見てきたって、それは表面上の私だ。
だけど、断言する槙野くんに少しだけ笑みがこぼれた。