君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】
「実はさ」
「うん?」
「ここに来るのに最初はタクシーを使おうかと思っていたんだよね」
「えっ」
その発想はなかった。
タクシーか、確かに。その手もあった。だけど、高校生がすぐに連想出来る手段ではない。
「タクシー呼ぼうとしたら、あの、さ、その、父さんに捕まって」
「え」
「送ってもらったんだよ、父さんに」
「ええっ!?」
「カッコ悪いよね、親同伴とか、本当に。でも手段選んでられなかったから。
ちょっと後悔してる」
「じゃ、じゃあずっと待ってくれてたの?」
「うん。適当にブラブラして来るからゆっくり話せって。で。こんな時間だし、藤さんの事送ってくれるって」
「えっ?私?」
嘘でしょ、めっちゃスウェットだし、酷いのに。だっさいのに。
槙野くんのお父さんに会うとか。
「はい、行こう」
「ちょ、ちょっと待って」
心の準備出来ていないんですけど!?
だけど、手を繋がれているから引っ張られるしかない。