君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】


槙野くんと別れて、学校を後にする。
帰路、私はずっと考えていた。


槙野くんの不思議な力について。


存在が消されてしまうって、よくよく考えたら物凄く怖い事じゃないか?
だって、その人の中から消えてしまうんだ。
私と槙野くんはあまり会話をした事がなかったから、違和感のないように思えるけれど。

これが、仲良しの友達だったら?
今までずっと仲良くしていたのに、突然友達関係じゃなくなるんだ。

それって怖い。


もしも。私がもしもこの力を使えるのなら。


そう思った時、最初に候補に出て来るのは嫌いな人間だった。
自分が嫌いな人間の存在を自分の中から消せたら、それって自分にとって凄く幸せなんじゃないかなって。


存在を消したい程に憎んでいる相手はいないけれど、それでもこの人苦手だな~って思う事はある。
言い方とか、態度とか。


……とか、なんとか言ってるけど。
私の中で消したい存在は決まっている。


自分の家に到着した私は、一昨年出来たばかりのまだ綺麗なその一軒家を見上げた。

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