君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】
アンティークチェアに座った私と槙野くん。
向かいには槙野くんお父さんが座っている。
すると、徐にお父さんが口を開いた。
「なあ、理人」
「何?」
「彼女なんだろう?あの力を使うの」
「…………」
あの力?
槙野くんはそう問われると、口を噤んだ。
だけど、小さくコクリと頷く。
槙野くんが頷いたのを確認すると、今度は私に話しかけた。
「瑠美子ちゃん。力の話は聞いたよね?」
「えっと、」
「誰か一人の記憶を消せるって話」
「あ、はい」
「代々伝わるこの力はね、最初に生まれた子しか使えないんだ。
初めて聞いた時は驚いただろう?」
「……まあ、それなりに」
「だよなあ。怜子はこの事を知らないんだ。知っているのは俺の時も母親だけだった。
一応、誰にどういう風に使うかだけは知らなきゃならなくてごめんな。
瑠美子ちゃんの事はもっと前に知っていたんだ。
な?不思議な力だろう?」
「はい、不思議だと思いました。でも、槙野くんの選んだ使い道は間違っています」
「藤さん!?」
そう答えると、隣の槙野くんが驚いた声をあげる。
目の前のお父さんも目を真ん丸にしていた。