君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】


「だって、私は今のままの彼を好きになりましたから。
槙野くんは本当に優しくて、どんな私でも受け入れてくれました」

「…………」


槙野くんをそっと見る。
彼は情けなく眉を下げ、私を見つめていた。



「理人。いい子、見つけたんだな」

「……うん。僕には勿体ないぐらい素敵な子」


照れ臭そうに俯きながらも、槙野くんはそう答えてくれた。
嬉しいな。そう思ってくれているんだ。


私は再度槙野くんのお父さんを見ると、声をかける。


「あの」

「ん?」

「お父さんはその力を使ったんですよね?」

「ああ、使った」


槙野くんのお父さんはすんなりと私の質問を肯定した。


「誰に使ったとか、聞いてもいいんですか」


そう尋ねると、お父さんは一度口を噤み、暫く呻っていたがやがて話し始めてくれた。


「俺が消したのは怜子の最愛の男性だった」

「え?」


それは槙野くんも初耳だったみたいで、驚いた様子で私とお父さんを交互に見ている。
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