君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】


「理人はね、優し過ぎるところがあるから」

「はい」

「それはね、あの人と一緒なの」

「え?」


ふふっと笑った怜子さんは少しだけ眉を下げ寂しそうな顔を見せた。


「あの人、何かを私に隠しているのよ。
時折、とても苦しそうな顔をするの。
でもね、私と一緒にいる時は笑顔を見せて心配かけない様にしているの」

「……」

「だから、私も聞かない。私の事、大切にしてくれているのわかってるから。
幸せだから。理人と、あの人と三人で過ごせる事が私には幸せだから」

「……」


怜子さんは何かはわからないけど、槙野くんのお父さんが隠している事を知っていたんだ。


「例えば!例えばなんですけどっ」


私は衝動的にそう言葉を発していた。
キョトンとした顔で私を見る怜子さんに続ける。


「昔、凄い好きな人がいて、色々な事があってその人の事を忘れてて、今出会ったらその人の事好きになると思いますか?」


一気に言い切った私はドキドキしながら返事を待つ。
怜子さんは眉間に皺を寄せると、腕を組み首を少しだけ捻った。
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