君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】
その時、コンコンと部屋をノックする音がした。
すぐに槙野くんの声も聞こえる。
「準備出来た?開けてもいいかな」
「いいわよ」
怜子さんが返事をした後、ゆっくりと扉が開く。
その陰からひょっこりと姿を見せた槙野くんは、私を見つけると目を真ん丸に見開いた。
「どうかな」
何も言わない槙野くんに私がそう尋ねると、槙野くんはハッとしていた。
「えと、その、あまりにも可愛くて、ちょっと言葉が出なかった」
「えっ」
その言葉に、一瞬で顔が熱くなる。
可愛いって。
嬉しい。
「ふふ、初々しいわねえ」
私と槙野くんはその声にハッとして顔を見合わせた。
そうだ、怜子さんがいたんだ。
槙野くんも照れたような、バツが悪そうな顔をしている。