君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】
「ねえ、藤さん」
「何?」
「もうすぐで夏休みが終わるね」
「そうだね。後、三日か。あっという間だね」
部活をしていたのもあったけど、この夏休みはあっという間だった。
槙野くんとたくさん一緒にいて、槙野くんでいっぱいだった。
幸せな一か月だった。
「僕さ、決めた事があるんだ」
「……決めた事?」
なんだろう。首を傾げながら私は彼の事を見た。
薄暗い中、槙野くんが口元を緩ませるのがわかった。
「夏休みの最後の日、僕の話聞いてくれる?」
「……うん」
私は小さく頷く。
その話は今じゃダメなのだろうか。
胸がざわつく。
嫌な話じゃないよね。
私と槙野くんにとって嫌な話じゃないよね。
そうやって確認したいのに、喉の奥が渇いて張り付いているようで、うまく声が出せない。