君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】


「ね、藤さん」

「うん」

「僕、藤さんの事が大好きだよ」

「……うん」

「ごめん。僕が変な事言ったからだよね」

「……」


違うとは言えずに、私は黙ったまま俯く。


「僕が藤さんを好きじゃなくなる事はないよ」

「……その話って、槙野くんを悲しませない?」

「え?」


槙野くんの気持ちが嘘じゃないのはわかっている。
私の事を大事にしてくれているのはわかっている。



“あの人、何かを私に隠しているのよ。
時折、とても苦しそうな顔をするの。
でもね、私と一緒にいる時は笑顔を見せて心配かけない様にしているの”

“だから、私も聞かない。私の事、大切にしてくれているのわかってるから。
幸せだから。理人と、あの人と三人で過ごせる事が私には幸せだから”


思い出すのは今日聞いた怜子さんの言葉。
大事にしてくれる槙野くんが伝えたい話。

それが、例え私が苦しむモノだったとしても。


「槙野くんが悲しむのは嫌だ。それを聞いたら……槙野くんは笑顔になれる?」
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