君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】
そう尋ねた瞬間、握った手に力が入った。
確かに槙野くんの体温を感じる。
槙野くんの体温。
「わか、らない。でも、きっと笑える。今よりもっと笑える」
「本当に?」
「……うん」
「そっか。なら今は聞かない」
「……」
私は槙野くんが笑えるなら、それでいい。
槙野くんの幸せを願っているから。
槙野くんは眉を情けなく下げ、顔を歪める。
「泣かせたらごめんね」
「……」
泣きそうなのは槙野くんじゃん。
「藤さんを泣かせないって思ってたのに」
「いいよ、槙野くん」
私は槙野くんの手を取って、ぎゅうっと握る。
槙野くんの泣きそうな瞳が私を視界に捉えた。