君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】
私は質問されるのを避けるように荷物を持って部室から飛び出すと、槙野くんの元へと走った。
穏やかな笑みを見せる槙野くん。
「僕の家に来てもらっても大丈夫?」
「うん」
どくんどくんと心臓が波打つ。
槙野くんの家に着くまで私達は何も言葉を交わさないまま、中へと入る。
怜子さんは買い物に出ていて、いないらしい。
部屋に案内された私は、机の前に腰を下ろした。
隣に槙野くんが座り、真っ直ぐに私を見つめた。
それから、一度息を吐き話し始める。
「驚かないで聞いてね」
「うん」
胸がざわざわとうるさい。
喉はカラカラで、笑顔で聞こうと思うのにうまく笑えない。
「……僕はやっぱり君の中の僕を殺そうと思う」
やっぱりそうだった。
さっきの槙野くんを見て、嫌な予感はしていた。
今の槙野くんがいなくなるなんて、嫌だ。
そう思うのに。
何も言葉が出て来なくて、私はじっとただ彼の顔を見つめる。