君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】
「勝手に決めてごめん」
「……」
「でも、もう決めたんだ」
「い、や。嫌だ。消さないで」
私はどうにか、そう声を振り絞った。
「……藤さん」
くしゃりと槙野くんの顔が苦しそうに歪む。
だけど、槙野くんが首を縦に振る事はない。
「大丈夫」
「嫌、嫌だ!嫌」
私は何度も何度も首を振った。必死で。
そんなの、嫌だ。
今までの槙野くんが私の中からいなくなるなんて。
好きだって言ってくれた槙野くんも。
泣きそうな顔で微笑む槙野くんも。
恥ずかしそうに照れた槙野くんだって、全部私の大切な思い出なのに。
全部全部大切な彼との思い出なのに。
「聞いて」
私の両頬を温かい手で包み込むと、彼は優しく微笑む。
昔までの弱弱しい彼はそこにはいない。