君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】
「槙野くん、変わった」
「そうかな。もしそう思うのなら、それは藤さんのお陰。
やっぱり藤さんは凄い。敵わないよ」
「……そんな事ない」
「ううん。知れば知るほどに藤さんはキラキラしていて、僕はどんどん藤さんの事が好きになった。
そして、好きになればなるほど自分が醜く感じて嫌だったんだ。
藤さんが何度も僕に勇気と、自信を与えてくれた。
今の僕でもいいんだよって、何度も教えてくれた。
だから、僕は君の中の僕を消しても大丈夫だって思えたんだ」
「……もしかしたら、槙野くんの事好きにならないかもよ」
勝手に決めてしまった彼への些細な反抗心。
だって、きっともう彼の決意は揺らがない。
最初から、彼はずっと揺らいでいなかったんだ。
だから、私がもう消したいと思っていないか聞いた時も即答出来なかったんだ。
その時からずっとずっと彼は自分を責めていたんだ。
絶対。なんてないじゃん。
私がまた槙野くんを好きになるかなんてわからないじゃん。
このまま私の中に今の槙野くんが生きていたら、幸せになれると思うのに。
醜く泣いて喚いて嫌だって叫べば、もしかしたら考え直してくれるかもしれない。
望みが薄くても、もしかしたら。
でも、私には出来ない。