君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】
「ごめん。言い方がおかしかった。僕が殺して欲しいのは、君の中の僕なんだ」
そう言って微かに微笑んだ槙野くん。
君の中の僕って……私の中の、槙野くん?
意味がわからない。
黙った私を見て、槙野くんは続けた。
「急で驚くかもしれないけど、僕は不思議な力を持ってるんだ」
「不思議な力?」
突拍子もない言葉に、私は眉間に皺を寄せ呟く。
「うん。僕はね、誰か一人の存在を消す事が出来るの」
「誰か一人?」
「そう。誰か一人」
淡々と話す彼はとても真面目な顔で、茶化している雰囲気は一切ない。
だからこそ、言ってる言葉が理解出来なくて眉間の皺が更に深く刻まれる。
「ちょっと、何を言ってるのか本当にわかんないんだけど」
「だよね」
そう言って、自嘲したように笑った彼は近くにあった机の上に腰かける。
この暑さで脳みそがやられてしまったんじゃないか。
そう思うぐらい彼の話は意味不明だった。