君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】


こんなにムシムシとした熱気が纏っているのに、彼は涼しい顔をしている。
今日は曇っているけれど、湿気を含んだじめっとした暑さは健在だ。


下敷きで仰ぐ男子や、だらしなく座る男子も多い中、彼一人ぴしっと座っている。


あんなに、姿勢正しかったっけ?


もしかしたら昔からああなのかもしれない。
今まで気にしていなかっただけで。


だけど。


―――いいなって思った。
素直に、単純に。


そのピシッとした姿勢は彼の真っ直ぐな心までも表現しているようだった。


“僕がもっと明るくて、人気だったら……もしかしたら藤さんは僕を好きになってくれるかもしれない”


そう思って、今までの自分を殺してしまう決断をしてしまうぐらい。
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