君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】
それに今日だって、槙野くんに呼び出されたとかじゃない。
先生の頼まれごとがあって、終わったから帰ろうと教室に来たら彼がいた。
それだけだ。
待ち合わせをしていたとかでもない。
教卓側の扉から教室に入ったら、槙野くんは窓の前に立っていたんだ。
まるで私が来る事をわかっていたかのように、そこに立っていた。
無言でカバンを持って立ち去ろうとした私に、彼は声をかけてきたんだ。
黙った私はどう返事をしたらいいのか、考えていた。
だけど、先に口を開いたのは彼だった。
「知ってた。藤さんが僕を好きじゃないなんてわかってた。
だから、消したいんだ」
ぽつりと呟く彼は続ける。
「僕は僕が嫌いだった。好きな人に話しかける事すら出来ない。
だから、親に力の事を教えられてからずっと僕は藤さんの中にいる僕を殺そうとしたんだ」
「……その力って」
さっきも聞いたけど、イマイチピンっと来ない。
誰か一人の存在を消すってどういう事なの。
疑問の眼差しで彼を見ると、小さく彼が息をつく。