君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】
槙野くんって、不思議。
こんな気になる存在になるなんて思っていなかったよ。
やっぱり強烈だった。
僕を殺して欲しいって言葉は。
それに、真っ直ぐに私に気持ちをぶつけてくれた人。
いいや、お風呂にでも入ってこよう。
お風呂出たら夕飯でも出来ているだろう。
勉強するからと断って、小分けにして部屋に持っていこう。
紗奈さんは喜んで取り分けてくれるだろうし。
そうと決めた私は着替えを手にして、部屋を後にした。
お風呂を出ると、案の定夕飯が出来上がったみたいだ。
紗奈さんに部屋で食べる事を伝えたら、ニコニコしてお皿に取り分けてくれた。
何も知らないお父さんは「勉強頑張れ」なんて声をかけて来る。
笑顔で「頑張るね」って返事をして、私は部屋に戻った。
もう慣れた筈なのに、やっぱり黒い感情が湧き出て来てしまう。
部屋に入ってすぐに私は大きな溜め息を一つついた。
溜め息が幸せを逃してしまうというのなら、私はもういくつ逃しているだろうか。
どうしたって出てしまう。
この家にいると。